クライアントから「モニターでみていた色と印刷物の色が全然違う!」「ホームページの写真を印刷に使って」と言われて困らないためにも改めてRGBとCMYKの関係値を整理してみました。
目次
まずはそれぞれの発色方法から
モニター=RGB
パソコンのモニターだけでなくテレビやデジタルカメラなどは光の三原色を利用して発色しています。
光の三原色は「赤(Red)」「緑(Green)」「青紫(Blue)」の原色を混ぜて幅広い色合いを再現できます。この3色は重ねるごとに明るい色になり最終的には白色になります。
オフセット印刷=CMYK
印刷物に使われ4色のインクを網点を利用して重ねることで発色しています。
CMYKはインクの4色のシアン(Cyan:水色)、マゼンタ(Magenta:赤紫色)、イエロー(Yellow:黄色)、黒(K:Key plate)の略です。この4色を混ぜ合わせるとRGBとは異なり黒く(っぽく)なります。
改めてオフセット印刷って何?
正しく理解するためにもオフセット印刷自体を先におさらいしてみました。
オフセット印刷を簡単に言うとCMYK4色の網点(*以下参照)の版を作り、それぞれの色のインクを重ね合わせて印刷します。
版からゴムのローラーに一度インキを転写するため版の傷みが少なく大量印刷に適しています。
小ロットの印刷にはトナーによるレーザープリントのオンデマンド印刷が主流になりつつあります。但し、オフセット印刷は大量に印刷するほどコストが下がるので、オンデマンド印刷とのコストパフォーマンスが逆転するロット数は1000枚程度が目安です。
もちろん色校正や、紙質、その他条件で異なりますので、発注の際は見積もってください。
オフセット印刷のもう一つの特徴はCMYKにプラスして特色が使えることです。(オンデマンド印刷では使えません)もしくは色数を減らして2色印刷や特色のみの印刷も可能です。
オンデマンド印刷はオフセット印刷と発色方法が異なるのでここから先は省きます。
*網点(あみてん)は雑誌の写真を拡大してみるとよくわかりますが、4色の点々の集合で再現されていることがわかります。この網点は各色ごとに角度が異なり微妙にずれているので、微妙な色の再現も可能で、モアレ(※)も少なくなります。
※モアレ=網点は、規則正しいパターンで整列しているため、細かな模様や漫画のトーンなど最初から網点のあるものなどは、網点が互いに干渉して縞模様が発生してしまいます。
引用ウィキペディア
モニターで見ていた色と印刷物が異なる理由
上記の通り、実際の発色数がRGBはCMYKに比べ断然多いことと、モニターは色を混ぜれば混ぜるほど白く、インクは混ぜれば混ぜるほど黒くなる特性のため、
最近はクライアントもこのことを理解してくれていて「モニターでみていた色と印刷物の色が全然違う!」と指摘されることは少なくなりましたが、そのせいか、逆に色を気にしない人も多くなってきた気がします。
また印刷では表現できない色を特色で補ったり、人肌をキレイに表現するのに蛍光ピンク(特色)をプラスする手法もあります。(予算が許せばですが・・)
ということで印刷物では予めラフの段階からCMYKを想定し、表現できない色を避けて作り込むことが大事です。
モニターにも印刷物にもある解像度の違いについて
実際にはデジカメにもスキャナーやプリンターにもそれぞれ解像度があり単位が異なったりして複雑なため、ここではモニターと印刷物だけに絞ります。
●モニターにおける解像度は画素の密度のことで(単位はpx=ピクセル)画像のきめ細かさや画質の滑らかさを表します。
モニターの一般的な表示色は約1677万色。中には約10億7374万色を表示できるものも。(PCの出力側も対応していないとダメですが)
●印刷物における解像度は使用する写真の解像度のことを指します。一般的にはフォトショップの画素数を指していて1インチあたりのピクセルの数(単位はdpi)で表します。
理論上の色数はRGBよりも多いのですが、実際には網点で表現するため表現できる色数は遥かに少なく数千色程度と言われています。
というのもオフセット印刷ではそれぞれの色の網点の角度を微妙にずらしながら重ねて印刷することできれいな色を再現しています。ルーペがあればお手元にある雑誌などを覗くと細かな点が集まって構成されてているのが分かると思います。この網点の細かさによって
網点の「細かさ=再現性」は線数によって決まりますが、線数は用紙との関係も重要で細かくしても紙に再現性が無ければ汚く出てしまいます。
適切な線数は、新聞のようにざらざらした紙の場合には85~133線程度、カタログなど通常の用紙であれば175線程度、さらに写真集などとてもキレイに出したいものは200~300線程度で印刷されるのが一般的です。
新聞は肉眼で見ても網点が見えますが、写真集などは全く見えません(老眼だから?)
印刷物とモニターの解像度、きれいに見える画素数が異なる!
印刷に適した写真の解像度の一般的な目安は、175線の出力線数であれば2倍の350dpi、ポスターなど間近に近づかずに見られる印刷物なら150~200dpiあればよいとされています。※それぞれ原寸時のサイズ
パソコンのモニターの解像度をdpiで換算すると72dpiがまだ一般的です。
「ホームページの写真をそのまま印刷物に使ってください」と言われても、単純計算で5倍近く解像度が異なるホームページの写真が印刷に適さない理由はここにあります。
オンデマンド印刷やインクジェットプリンタはRGBに近い発色も可能!?
実はオンデマンド印刷だと少し話が違ってきます。
レーザープリントのトナーに特殊な高彩度トナーが使われていたりして(印刷所によっても異なります)RGB発色をかなり近いところまで表現できるようになりました。家庭で使っている4色のインクジェットプリンタも実は似たような理由で写真はCMYKよりもRGBデータのままの方がきれいにプリントされます。さらに5色以上のインクジェットプリンターはCMYKでは発色できない色を補色しているのできれいに出ます。
最後にオフセット印刷でよく耳にする言葉もまとめてみました。【CMYKの黒(K:Key plate)って?】
実はCMYKの「K」は黒(Kuro)の頭文字とかではないんです。
K=Key plate(キー・プレート) の略で、画像の輪郭など細部を示すために用いられた印刷板のことでその頭文字です。
【リッチブラックって?】
リッチブラックとは、CMYKそれぞれの色をかけあわあせて作成される黒のことで、同じ黒でもしっかりと締まりのある濃い黒になりますが、すべて100%にしてしまうとインクが乗りすぎて逆に適さないため、各色30~40%+K100%が推奨されています。
また細かい文字には版ズレ(※)するため適しません。
※版ズレは4色を個別に印刷するため、正確に同じ位置に印刷できないと起こり、細かな文字は滲んだようになり読みにくくなります。
【軽オフセット印刷って?】
紙製の版を使用して小型の印刷機で刷る、簡易のオフセット印刷のことをいいます。
紙製なので製版コストが安いけど耐久性は無いので、小ロットでコストを抑えたいときにおすすめです。
【オーバープリント(スミノセ)って?】
デザインで写真の上に黒でキャッチを乗せたとします。その場合、何も指定しないと実は製版ではキャッチの下の写真は白で抜かれてしまいます。
(キャッチがシールだとすると剥がしたら写真が無く白くなっている状態)
このままだと版ズレが起きると白が見えてしまうため、黒100%を乗算して写真に乗せる処理を指します。