画面サイズの持つ力

気がつけば2020年になり、あっという間に1月も終わりそうですね。
ブログの更新も1年以上ぶりとなり、お久しぶりになってしまいました。

小川の個人的な近況としましては、ようやくNetflixデビューを果たしてますますインドア派になりました。
そして休日はマルチデバイスの利点を最大限に生かして、デスクトップパソコンやテレビで長時間作品を見続けた後に、疲れたらベッドでくつろぎながらスマホで続きを見るという荒業をしています。

以前はスマホで映画とか画面小さすぎない?などと思って避けていた部分もあったのですが、見始めると画面の大きさなどは気にならず、集中して鑑賞できるので手軽さという点でかなり活躍しています。
ただ、ものすごくいいシーンでメッセージの通知がきたり、リラックスしすぎて途中で寝てしまうなどの危険性はありますが…!

「Netflix and Chill」(人を招いてくつろぐ、いちゃいちゃする)なんていうスラングができるほどの超大手サービスをようやく…!

いろんな画面のサイズで鑑賞して、気がついたこと

サブスクリプションの動画配信サービスのいいところは山程あるんですが、やっぱり海外ドラマを気兼ねなく一気観できるというのはとても強いです。
TSUTAYAでDVDを借りて海外ドラマを観始めたはいいけどお小遣い的に来月にならないとこの話の先を見られない、なんて悔しがっていた自分に、未来であなたは海外ドラマを好きなだけ一気観しているよと教えてあげたいですね。

そんな中、TV、PC、スマホを横断している中で何か違和感のようなひっかかりを感じることがありました。
気になったらなぜかをたくさん考えるのがデザイナーの性分、そしてわかったのは、スマホで見ているときとTVでみているときではキャラクターやシーンの印象が違う、ということでした。
いちばんわかりやすかったのはアクションシーンです。
スピード感と迫力が大事なので画面がごちゃごちゃすることが多いですが、スマホのときはコンパクトなのでその辺りが省略されて高みの見物というか、神様目線で「おお、やってるやってる〜」みたいな俯瞰した見方になりやすく、逆にTVやPCのモニターで見ると表情、動き、美術の細部まで見えてくるので身近な出来事として捉えやすくなるのです。
なので最近は作品によってどのデバイスで見るかも考慮する、というのも私の中で新しい楽しみのひとつになっています。
例としては、パニックムービーやホラー映画を一人で観るときはちょっと怖すぎるので小さめの画面でみて他人事として受け取りやすくする、とか、落ち着いたヒューマンドラマのときこそ画面の細部まで観察して読み取りたいので大きい画面で見る、などですね。もちろんアクション映画やサメ映画を大画面で見るのも大好きです。

どでかいサメに襲われるサメ映画入門におすすめの作品です

サイズによって抱くイメージが変わる体験は、今までずっと身の回りにあった

よく考えてみると、その体験は映画館で一度見た作品がディスク化されて、家で見直すときとおなじものでした。
それまでは、受け取る印象が変わる原因はその作品を観るのが二度目で知っているストーリーだから、という理由だけかと思っていたのですが、画面の大きさが変わることで目に飛び込んでくるディティールが変わってくる、つまり受け取る情報量が大きく違うというのも大きな要因だったのです。

劇場での鑑賞からディスク化したものを自宅で観る、とは少し違うのですが、この体験で特に印象深く面白かったのは「serch」を劇場で鑑賞したときでした。

全く新しい映画体験
100%すべてPC画面の映像で展開するサスペンス・スリラー!
物語がすべてPCの画面上で展開していく斬新なアイデアと巧みなストーリーテリング。
サンダンス映画祭2018で観客賞を受賞!
これまでも多くのスタイルを追求してきた「映画」に、またもや革新的な一本が誕生した! 『search/サーチ』は、なんと100%全編、PCの画面だけで展開される。Google社のプロジェクトで、全編グーグル・グラスのみで撮影した短編を制作し、映画の未来をリードする気鋭の才能アニーシュ・チャガンティの初長編監督作ながら、2018年のサンダンス映画で上映されるや、たちまち大評判を呼び、観客賞(NEXT部門)を受賞。過去に例のない、まったく斬新な映像体験。予想の斜め上を行く展開のサスペンス。『search/サーチ』は、2018年の「事件」になる一作だ!

引用 https://bd-dvd.sonypictures.jp/search/

あらすじの通り、作中のストーリーはすべてMacのモニターの中だけで展開されるというかなり実験的かつ時事的な映画だったのですが、話の中でデフォルトのスクリーンセーバー画面になるシーンが出てきます。

macのスクリーンセーバー

この上の映像を普段27インチのiMacで見慣れていたのにも関わらず、映画館の巨大なスクリーンと暗い劇場内、という環境に変わっただけでものすごく酔いそうな、不思議と不安な気持ちになってしまったのです。
考えてみれば巨大な光の塊がうごめいているのでそりゃそうだという感じですが、情報量の差によっては見慣れたものでも新たな感情が生まれるくらいぐらい影響があると身を持って実感しました。

もっというと、CDアルバムで聞いていたときはそんなに好みではなかった歌をライブで聞いたら大好きになるのも、モニターでしか見ていなかった名画を展覧会で見たら想像以上の色の厚みに圧倒されるのも、同じ体験ですね。
でもここまで言うと情報が大きいほうがより良いのか?などとも思ってしまいますが、小さいサイズのときは情報量が減るからこそ、一拍おいてから客観的に受け取れます。これもまた、重要な感覚ですよね。

画面のサイズがもつ力

このようにサイズによって全く印象が変わってしまうのであれば、大きさは制作において条件ではなく、色や形と同じく要素の一つです。
今までも無意識に気づいていたかもしれませんが、私は体験を通してやっと自分の手段の一つとして認識できるようになりました。

赤色を使ってくださいと色を指定されたときと同じように、A4サイズが持つ印象も合わせて画面をコントロールすることで、より伝わりやすい制作へとアップデートできるのではないでしょうか。
また、伝えたい情報の量や条件ではなく、イメージからサイズを選んで制作するというのも面白いかもしれません。